※修士設計時の文章より。設計内容はこちらから
建築の本質的な性質は、秩序をつくりだすことである。
目指すのは、単純化できない現実を受け止める包容力と、物理的あるいは感性的な働きかけによる喚起力を持つ秩序である。
仮に、この秩序を『しなやかな秩序』と呼ぶことにする。
例えば古い民家や自然発生的な都市などの時代を超えて評価されている建築は強く人々を惹きつける。
言葉では言い表せない豊かさを獲得しており、本提案の目標とする質に非常に近いと考えている。
しかし、この質は〈一人〉の建築家が設計したものでもなく、意図して予定調和でつくられたものでもない。
それでは、古い民家や自然発生的な都市のもつ質を、現代の都市において新たに獲得するにはどうしたら良いのだろうか?
『しなやかな秩序』 は、偶発性や多様性、 不確定性を受容すると同時に誘発し、〈一人〉の建築家の限界を越え、予定調和を超えた質を生み出す可能性を秘めていると考えている。
これは近代の機械論的な考えの枠を超えており、これからの建築の最も本質的で普遍的なテーマになり得るのではないか。
日々新たな気づきや発見、人や出来事との出会いに溢れた状態。
コンテンツや流行、時代が次々と移り変わっても色褪せずに人を惹きつける。