つくり続ける家

初めて訪れたその家は不思議な印象を持っていた。
庭に面した部屋から直接出入りしている。
この部屋にはベッドが置いてあって、靴を脱ぐと目の前にベッドが置かれている。
玄関だった場所には洗濯物が干してある。
陶芸の工房は「もともと診療所だったみたいです」と軽やかに生まれ変わっている。

かつて存在した障子や襖の多くは取り払われ、部屋という単位が曖昧になっている。
50年前に建てられたこの家は、主の逝去後、空き家の期間を経て2年前に5人家族の手に渡った。
この家族はかつての機能に捉われず、動物的な感性でセルフリノベーションを繰り返し、本能的に、良い生活を求めて躍動している。

この家族と共に、今後もこの家をつくり続けることが本プロジェクトの内容である。

現状を刷新せず、整理しすぎず、アッセンブリッジされた状態を受け継ぐことが重要だと思えた。そのために個々の要素を等価に扱い、一つの秩序に収斂しないように気を配った。
「アッセンブリッジ」という手法は、そのいくつかが失われても、あるいは新たに付加されても、全体の質が瓦解することはない懐の深さを持っている。

これからも生き物のように変わり続けるだろう生活の形と共に、多方向の未来に開けた開放系を目指している。